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加熱式タバコや、電子タバコについて

最近、非燃焼、加熱式タバコ、電子タバコがコンビニエンストアでの販売されていますが、店頭の目立つところに設置されています。

日本呼吸器学会から昨年、非燃焼、加熱式タバコ、電子タバコに対する日本呼吸器学会の見解が発表されました。

以下抜粋です。

1.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある。

2.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来の燃焼式タバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。

非燃焼・加熱式タバコや電子タバコは、従来型のタバコ製品(燃焼式タバコ)とは異なる新しいタバコ製品であり、葉タバコを加熱することによりニコチン含有エアロゾルを発生させて吸引するタイプ(非燃焼・加熱式タバコ)、液体(ニコチンを含むもの、あるいは含まないもの)を加熱してエアロゾルを発生させて吸引するタイプ(電子タバコ)とがあります。非燃焼・加熱式タバコやニコチン含有の電子タバコには、従来型の燃焼式タバコと同様に依存性薬物であるニコチンが含まれています。

これらの新型タバコは、「煙が出ない、あるいは煙が見えにくいので禁煙のエリアでも吸える」、「受動喫煙の危険がない」、「従来の燃焼式たばこより健康リスクが少ない」と誤認され、急速な広がりをみせています。そのため、日本呼吸器学会は、新型タバコの国民の健康に対する影響や社会的影響について憂慮し、学会としての見解を示します。

非燃焼・加熱式タバコや電子タバコは、燃焼式タバコをやめられない人、あるいはやめる意志のない人にとっては健康被害の低減につながるとして、従来の燃焼式タバコ使用者は代替品として電子タバコを使用することを推奨する考え方があります。しかし、これらの新型タバコの使用と病気や死亡リスクとの関連性についての科学的証拠が得られるまでには、かなりの時間を要します。現時点では明らかでなく、推測にすぎません。

非燃焼・加熱式タバコの主流煙中に燃焼式タバコとほぼ同レベルのニコチンや揮発性化合物(アクロレイン、ホルムアルデヒド)、約 3 倍のアセナフテン(多芳香環炭化水素物)等の有害物質が含まれていること、が報告されています 。一方、ニコチン入り電子タバコ使用者から検出されるニコチン代謝物は、燃焼式タバコ使用者を基準(100%)とするとほぼ同等量(80 - 200%)が検出されるが、タバコ特異的ニトロソアミンの尿中代謝物は燃焼式タバコ使用者の 1.5 - 4.2%、揮発性有害物質の代謝物は 20 - 60%程度と少ない、とする報告があります 。しかし、体内に有害物質が取り込まれているのは明らかですし、この量が健康被害の低減につながる曝露量なのか、科学的根拠はありません。また、加熱によりエアロゾルを発生させる仕組みは、ニコチン以外のリキッド成分を分解して複雑な混合物を発生させ、発癌性物質に変化することが指摘されています 。葉タバコを加熱してエアロゾルを発生させるタイプの電子タバコでは、土壌中から蓄積した放射線元素のポロニウムも、燃焼式タバコと同様に含有されています。新型タバコは周囲の人々への受動喫煙の危険が指摘されています。「煙が出ない、あるいは煙が見えにくい」とされていますが、特殊なレーザー光を非燃焼・加熱式タバコ使用者の呼気に照射すると、大量のエアロゾルを呼出していることが明白になります。燃焼式タバコ使用者の呼出煙(“見える煙”)と同様に、大量の“見えにくいエアロゾル”を呼出しています。世界保健機構では、「電子タバコのエアロゾルにさらされると、健康に悪影響がもたらされる可能性がある」と指摘しています 。世界保健機構がレビューした複数の研究では、

1)電子タバコ使用者の呼出煙中のニッケルやクロムなどの重金属濃度は、燃焼式タバコの呼出煙よりも高い、

2)PM2.5、ニコチン、アセトアルデヒド、フォルムアルデヒドなどの濃度は燃焼式タバコの呼出煙中より低いが、通常の大気中濃度の 14 - 40 倍(PM2.5)、10 - 115 倍(ニコチン)、2 - 8 倍(アセトアルデヒド)、20%高い(フォルムアルデヒド)、

とされています。

燃焼式タバコの受動喫煙による健康リスクに対しては明確な科学的根拠がありますが、新型タバコの受動喫煙による健康リスクについて科学的証拠を得るにはかなりの時間を要します。有意な健康リスクではないとの主張もありますが、根拠はありません。しかし、“見えにくいエアロゾル”中には通常の大気中濃度を上回る有害物質があるわけですから、「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的である」、と世界保健機構は述べています 。特に、呼吸器疾患を持つ患者さん、冠動脈疾患をもつ患者さん、などにとっては有害な影響がでることが懸念されます。また、何よりも、このような有害物質を含む呼出煙を吸わされることを望む方はいないでしょう。新型タバコは、従来の燃焼式タバコに比べてタール(タバコ煙中の有害物質のうちの粒子成分)が削減されていますが、依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する製品です。

従って、使用者にとっても、受動喫煙させられる人にとっても、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は推奨できません。

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2018年05月16日 08:24に投稿されたエントリーのページです。

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