第4回講座 う蝕(虫歯)1
別のサイトで依頼を受け投稿した記事を何回かに分けて、載せています。
ご興味のある方はお読みください。
う蝕(虫歯)というのは、水晶の硬さと同じくらい、硬い歯が細菌に感染して、歯がボロボロになることを言います。
下記のう蝕(虫歯)の図で、黒く塗った部分にう蝕(虫歯)ができています。青色で四角に囲んだ部分の拡大図が下記の右のう窩(虫歯の穴)の写真です。
この写真は、ネズミにS.mutans(ミュータンス菌)と砂糖を食べさせて、う蝕(虫歯)を作らせ、できたう窩(虫歯)の部分を顕微鏡で見たものです。「黒くなった」まだその先、神経のすぐ近くまで、細菌は深く浸透しています。
1)歯の咬む面(咬合面)の中に、細い溝があります。その中に細菌をためるとそこからう蝕(虫歯)が始まります。
2)エナメル質を通った細菌は、象牙質へ入り、象牙細管を通って神経の穴に入っていきます。
う蝕(虫歯)はバイオフィルムによる感染症です。Mutans(ミュータンス菌)菌群(St.mutans, St.sobrinusなど)が歯に感染することにより引き起こされます。細菌に対する歯の抵抗力の低下が誘因となります。予防は寄生体である悪玉の細菌の数を減らすことと、宿主である自分の歯や身体の抵抗力を向上させることが大切です。
しかし、このバイオフィルムにたいする、自分自身のもつ免疫応答(生体防御機構)だけでは、予防や治癒は困難です。歯そのものの酸や細菌に対する抵抗力をつけることも重要です。
また、食生活の中で、繊維質の多い野菜などで、食べながら、歯の表面をこするような自浄作用を期待するのも必要なことです。
なぜ、虫歯になるの?
1.食生活の乱れ
1)自浄作用のある野菜や固いものを食べない。
2)甘いものや、粘りのある物が好き。
3)食べる時間が不規則
2.唾液の性状
1)酸の中和力が弱い
2)ねばねばした唾液
3)唾液の量が少ない
3.う蝕原生細菌が多い
4.歯磨きが不適切
5.歯質強化をしていない
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どうしたら防げるの?
1.食生活の改善
1)まんべんなく食材を取る(自浄作用のある野菜や固いもの)
2)甘いものや、粘りのある物はできるだけさける。
3)生活リズムをよくする。
2.固いものをよく咬み、唾液腺を刺激。水分を十分に補給。全身の体調を整え自律神経を正常に。
3.善玉細菌を増やす努力
4.適切な歯ブラシ方法をプロに教わる。
5.フッ素などをうまく使い、歯質強化をする。
3.歯の構造
1)エナメル質:カルシュームが主で、水晶と同じくらいの堅さがあります。
2)象牙質:堅いのですが、エナメル質より柔らかく、う蝕(虫歯)にもなりやすい。
3)歯髄(しずい):神経と血管が入る組織です。
5)歯根膜(シコンマク):歯と骨を繋いでいる繊維状の組織で、硬い骨と歯がぶつかって壊れるのを防ぐ緩衝作用もしています。
6)セメント質:歯の根っこの周りを覆っている骨状の組織です。
7)歯槽骨(シソウコツ) :歯を支えている骨。
実際のう蝕(虫歯)の様子を見ます。
上顎第二大臼歯に2つのう蝕(虫歯)があります。ほぼ中央(赤色の円)の黒い部分が中央小窩といい、この部分はう蝕(虫歯)が発生しやすい場所です。このう蝕(虫歯)はダイアグノデント(レーザで、う蝕(虫歯)の感染の度合いを調べる器械)で調べると細菌が深く感染しているのが分かりました。
一方、左の黒い部分(黄色の円)は、遠心小窩(う蝕の発生しやすい場所です)。そこから下へ向けて遠心舌面溝と言い、この部分をダイアグノデントで検査するとエナメル質の表面だけの感染であることが分かりました。
5.う蝕(虫歯)の処置②
肉眼では細菌に感染した部分は削除できたと思ったところにも、薄くピンク色に細菌が染まるところが確認できました(緑色の円の中)。その部分を、細菌に感染した部分だけを削れる(健康な部分は削れない)材料でできた切削バー(削るドリルの一種)や歯を削れるレーザ、あるいはマイクロメーター(ミクロン)単位の細かい粒子を高圧で吹き付けて削るようにします。これらの方法はいずれも痛くなく悪くなった部分を削除することができます。最近はこのように痛くなく、感染した部分だけを切削できる道具が開発されてきているので、無痛の状態で、細菌に感染した部分を最小限取り除く治療法が確立されました。これをMinimal Intervention(最小の侵襲)治療と言い、歯を必要以上に削らない治療方法に変わりつつあります。
6.う蝕(虫歯)の処置③
治療として、中央小窩は切削器具を使い細菌に感染した部分を削除しました。切削した場所は穴が開いて見えます。
う蝕(虫歯)検知液とは、歯の中に感染した細菌を染める液です。
肉眼で見えなかった細菌もこれで染めて、その部分だけを削るようにします。
う蝕(虫歯)検知液でピンク色に染まった部分も取り除かれ、細菌に感染した部分がなくなりました。現在ではこの部分に、口腔内でレジンに光を当てて固まる材料を用いて修復するようになってきました。
赤色の円で囲った部分が先ほど切削したう窩に相当する部分です。先ほどの穴が嘘のようにきれいに修復でき、まるで最初からう蝕(虫歯)などなかったように修復できました。現在では、早く治療すればこのように、痛くなく、1日で、きれいに修復することが可能になりました。また、黄色の円で示した、遠心小窩と遠心舌面溝は削らないで、フッ化ジアミン銀という薬と、治療用の半導体レーザを使って細菌の活動を不活化することでエナメル質を保存することができました。
【治療前】
治療前と治療後ではこのように違います。
また、う蝕(虫歯)になったことに気がつかないで、‘しみたり’、‘痛くなった’りしてから治療に行くと、大きな侵襲になり、もっと大きく削ったり、神経の穴まで細菌が行っているために、大きな治療になり、隣(右)に見られるように金属でかぶせなければならないようになります。
【治療後】
早く治療すると、このようにきれいに修復できます。